大会長挨拶

 

日本発育発達学会第 23 回大会
大会長 藤 原 素 子
奈良女子大学生活環境学部 教授

 

 日本発育発達学会第 23 回大会にご参加、発表いただき、ありがとうございます。今大会の会場であります奈良女子大学は、世界遺産に登録されている古都奈良の文化財8か所のうち5つが点在する奈良公園のすぐ西に所在しており、そのうちの一つである東大寺の屋根を学内から眺めることができます。そして、東大寺二月堂では、1200年以上続いている伝統行事の「お水取り」が、3月12日の深夜から13日未明にかけて行われます。お水取りは奈良に春を呼ぶ儀式でもありますので、参加される皆さまには春が到来した奈良を満喫いただければと思っております。さて、2020年から3年間続いたコロナ禍での生活では、老若男女を問わず著しく身体活動が制限されました。社会におけるこの劇的な変化はその後の生活や健康に大きく影響すると予想され、特に子どもたちの体力や運動制御能力に及ぼした影響については、今後追跡・検討しなくてはならない重要な課題であります。また別の角度からは、AIの台頭が目覚ましい時代になり、進化したAIは人間の思考に近づき、将来的には人間を超えるかもしれないとも言われています。近い将来、ロボットによるオリンピック大会が開催されるかもしれません。そんな時代の中で、これから私たちは様々な場面でAIをうまく活用しながら、そのメリットとデメリットを見極めていく必要があります。同時に、ヒトの運動制御における巧みさ、不思議さに改めて目を向ける必要があるでしょう。これらのことを鑑みまして、今大会では「子どもの巧みな動きを考える」というテーマでシンポジウムを二つ企画しました。一つは、「⼦どもの巧みな動きの基盤となる脳」に焦点を充てており、もう一つは「⼦どもの巧みな動きとその評価法」と題して、子どもにとっての巧みな動きについてシンポジストの方にお話しいただきます。今大会が、「発育・発達、健康、運動に関する科学的研究並びにその連絡協同を促進し、この分野の研究の発展をはかり、さらに実践に資すること」を目的とする日本発育発達学会における研究の一層の促進と、参加いただく皆さまにとって、新たな視点に対する気づきや獲得につながる刺激に富んだものとなれば幸甚です。最後に、本大会を開催するにあたり多大なご理解、ご支援、ご協力を賜りました、奈良女子大学、学会事務局、大会実行委員、大会スタッフの関係各位に心よりお礼申し上げます。

 

2024年7月吉日